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2014年8月27日水曜日

【社説】戦後補償を正面の課題に 1993年8月5日(河野談話発表の翌日、細川政権発足直前)


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1993年(平成5年)8月5日
社説 2面

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戦後補償を正面の課題に


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 宮沢政権が最後の仕事として、旧日本軍の従軍慰安婦問題の調査結果をまとめた。韓国で初め
ての聞き取りも踏まえ、慰安婦の募集や管理が「甘言、強圧によるなど、総じて本人の意思に反して行われた」と官房朝刊談話は述べている。被害者の名誉回復への前進である。
 慰安婦問題は韓国にとどまらない。フィリピン、インドネシア、マレーシア、台湾、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、さらにはオランダからも被害者の声があがっている。
 同時に、この一両年の間に日本の過去の行為に対するさまざまな補償請求が相次いでいること
に目を向けるべきだ。
 中国や朝鮮半島からの戦時強制労働者の強制連行や賃金の未払い、香港の軍票、台湾の旧軍人・軍属の軍事郵貯、インドネシアの「ロムーシャ」や「兵補」の給与未払いと、問題の広がりようは、戦後補償をなおざりにしてきたツケが、一気に噴き出してきた感じである。
 自民党政権は、これらの多くの問題は戦時賠償や請求権の放棄などによって国家間で解決ずみ
、との立場をとってきた。ところが最近は、各国の被害者が直接、日本の補償を求めて提訴するようになっている。ただ単に法律論で身構えるだけではなく、むしろ、政治が対処すべき問題として考える必要があろう。
 慰安婦問題や労働者の強制連行について、それらが当時の政府や軍当局によって集中的に行われたことに日本の「特異な体質」を読み取ろうとする動きも外国にはある。自国の組織の内側に
しか目を向けず、外に向かっては正邪の判断が失われてしまったことを、今日の日本に結びつけ
て考えようとする傾向だ。
 それが誤りであることを示すためにも、戦後補償という問題に正面から向き合わなければなら
ない。道義に照らして恥ずかしくない対応が必要だ。
 連立政権を発足させる八党派が政策の基本合意の一項に、「戦争責任の表明」を掲げたことは
正しい。社会党の土井氏が衆院議長への就任を受けるに当たって、「戦後補償への取り組み」を
挙げたのも大事な視点であり、実行が期待される。
 宮沢政権は、慰安婦にされた人たちへの「おわびと反省」をどのような形ですべきかを、次期
政権にゆだねた。
 新しい政権、新しい国会は、それにとどまらず、「過去」への取り組みに明確な態度を打ち出
す必要がある。
 第一は、市民運動団体や学者、専門家とも協力し、事実の調査、資料の探索を徹底的に進める
ことだ。慰安婦問題については、民間の資料発掘の努力が政府の対応を促す大きな材料となった

 第二はそのための部局を政府に設けることだ。担当相を定めて責任体制をはっきりさせること
も考えたらよい。場当たり的なやり方では、日本が過去の問題に恒常的にとりくむという決意は伝わらない。
 第三は、反省と謝罪をはっきりと内外に宣言することだ。これまでの歴代政権は小出しに「謝罪」を述べることに終始してきた。国会も、真珠湾五十周年や韓国の大統領の訪日に備えて反省決議をする案が浮かびながら、いまだに実らないままだ。
 第四は補償すべきは補償するという態度を明示することだ。原則の確立を急がなければならな
い。

 そして、何よりも大事なのは、「歴史の教訓」を常に忘れず、私たち自身がしっかりと語り継
ぐことだ。

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